もくじ
藻場再生と磯焼け対策例
藻場再生と磯焼け対策は日本全国の海岸で最近では積極的に行われていますが、一体具体的にはどのような方法が取られているのかをご紹介します。
磯焼け対策によく使用されているのが、落葉広葉樹の伐採したものを原材料とした腐植土である「バイテクソイル 」で、こちらは海を汚すことなく、磯焼けの原因の一つを言われている石灰藻を取り込むことができるため、海底に巻いてみたり、藻が生えている岩の付近に散らしたりしています。
またテトラポットを埋めて綺麗な岩に新しい藻が生えることができるよう、藻場再生への環境を整える施工をしている海岸もあります。
藻場再生における磯焼け対策とは
海岸に海苔やわかめ、昆布という物があるのが当たり前と思っているという方にとって、常識を変えなくてはならない現状が存在しています。
今まで当たり前にあった海苔やわかめ、昆布などが突如として姿を消したという状況も各地で見られています。そのような状況を打破するため、藻場再生や磯焼け対策という事業が行われています。
再生への取り組みは少しずつ結果が出されており、磯焼けが起こり、従来生息してきた海藻類が減少することに対する原因究明や、磯焼け対策、コンクリートブロックが海底に設置されるなど、様々な工夫が専門的知識を有する方々によって行われています。
藻場再生の地域コミュニティと協力した再生活動
漁業者と自治体の連携事例
藻場再生の成功には地域コミュニティの協力が欠かせません。その代表的な事例として、漁業者と自治体が連携する取り組みが挙げられます。全国では約290の漁協が藻場保全活動に参加しており、施肥による栄養供給や雑海藻の除去、母藻の供給、種苗の生産・供給などを継続的に行っています。たとえば、奄美大島・瀬戸内町ではホンダワラの藻場再生プロジェクトが実施されており、観光業が厳しい状況となったコロナ禍をきっかけに地域振興の新たな柱として注目されています。こうした活動により、藻場再生が地域の環境改善と生業の両方に寄与しています。
教育プログラムで次世代を巻き込む
藻場再生を持続可能な活動とするためには、次世代への意識啓発が重要です。一部の地域では学校と連携して、環境教育プログラムを実施しています。子どもたちが藻場の重要性や効果的な再生活動について学ぶことで、未来のリーダーを育成しています。また、地域のダイバーや研究者が現場を案内しながらプログラムを実施することで、好奇心を喚起し、具体的な行動を促しやすくしています。こうした教育活動により、次世代の担い手が増え、藻場再生の取り組みがさらに広がっています。
地域産業を活かした持続可能な取り組み
藻場再生を地域に根付かせるためには、地元の産業と連携した取り組みが有効です。たとえば、漁業に携わる方々が主体となり藻場再生を推進し、それにより漁場の回復や水産資源の増大を図るケースが多く見られます。また、クラウドファンディングを活用した事例もあり、漁業者の努力が資金調達活動を通じて広く支持されました。これにより、支援者と地域のつながりが深まり、再生活動が経済的に安定性を持つことにもつながります。その結果、地域全体での持続可能な発展が期待されています。
藻場再生における課題と未来展望
技術的課題と解決への道のり
藻場の再生には多くの技術的課題が伴います。例えば、磯焼けやガンガゼの増加による藻場の消失は、水温上昇や栄養塩の不足など複雑な要因が絡み合っています。また、現場環境に適応した効果的な資材の選定や、再生手法の確立には科学的知見と現場での試験を繰り返す必要があります。例えば、トリニティーゼット®️を活用した実験では、藻類の成長促進やガンガゼの抑制が確認されましたが、これを広範囲で持続的に活用するにはさらなる改良と予算の確保が必要です。 一方で技術的課題を乗り越えるため、鉄鋼スラグを使用した海底構造物の設置や、AI解析による藻場のモニタリング技術といった新しい科学技術が導入されています。藻場再生の事例と業者の協力による取り組みが広がるなか、既存の技術を組み合わせながら応用することで、地域ごとに異なる環境課題に柔軟に対応することが期待されています。
国際的な協力とグローバルな視点
藻場再生は一国だけの取り組みではなく、国際的な連携がますます重要視される分野です。特にブルーカーボンの概念が注目され、藻場がCO₂を吸収し、炭素を固定する環境負荷の低減策として評価されています。年間132万〜404万トンのCO₂吸収が日本国内で期待されており、こうした取り組みを成功させるには他国との技術共有や情報交換が不可欠です。 グローバルな視点では、国際会議や環境保全プロジェクトへの参画が鍵となります。ブルーカーボンネットワークのような組織は、日本国内のみならず他国の支援活動とも連携し、藻場再生プロジェクトを進展させています。また、藻場の再生にはサプライチェーン全体の協力が必要で、企業や研究機関を巻き込んだ取り組みが進行中です。このような国際的な協力体制を強化することで、藻場再生活動のスピードアップが期待されます。
気候変動に適応する藻場の役割とは
気候変動は藻場の存続に大きな影響を与えていますが、逆に藻場が持つ環境適応力が注目されています。藻場は豊富なCO₂吸収能力を持ち、その特性を活かしてカーボンニュートラルに貢献する「ブルーカーボン」として再評価されています。特にアマモ場などは「海のゆりかご」とも呼ばれ、海洋生態系の多様性を支える重要な役割を果たしています。 一方で、気候変動による水温上昇や海流の変化が藻場の分布範囲と成長に影響を与えています。このため藻場再生には、地域ごとの気候状況を反映した適切な技術や管理方法の導入が求められます。2024年には業務提携に基づく新たな実証実験が開始予定で、気候変動に適応できる技術の向上も重要視されています。藻場の再生は単なる環境保全にとどまらず、気候変動への適応策としても期待される分野です。
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